究極のカクテル | 第20話 ついに独立、リッキーの腕まくら ( Ricky’s Arm )

いつも通りに戻った、と言っても、もう二人の関係はこれまでと違います。

旅行から戻った彼女がミックのフィアンセになっていたという、とんびにさらわれた驚きの展開。

しばらくネクター作りに熱中しました。

いろいろなフルーツを配合して、オリジナルを研究しています。

休み中も、旅行から戻ってからもずっと、お店をブランディに任せています。彼女が一番の仲良しで、ほとんどこの店の責任者です。

「突然ミックと旅行に行くと思ったら指にダイヤって、どういうこと ?  それに当分お店に出られないからお願いって… 」

ブランディも不信に思っています。

「リッキーはこれからどうするのかしら。一人になるなら、私が狙ってもいいわけよね 」

そうなってもいいかも。ぜひご検討ください。

リッキーは、あの日はショックだったけどその後はいつも通りケロリとして、普通にカクテルを作っています。

彼もネクターにすっかりハマり、自分のオリジナルを作ろうと夢中です。

血清フルーツとチェリーと炎の果実をミックスして、バンパイア専用のカクテルベースにしようとしています。

(イメージなのでうまくはできないけど、リッキーが努力しています )

精力的に店を続けるので、繁盛しています。

女性のお客もたくさん。人気バーテンダーの彼を目当てに、毎日のように常連客がきています。

 彼は、その場で女性をイメージしたオリジナルカクテルを作ってくれるので、大人気。

しばらく忙しい日が続きましたが、

ある日、ケイトリンがいいました。

「見せたいものがあるんだけど、一緒にきてくれる ? 」

ここはオフィス街近くの港が見える空き地でしたが、いつのまにか新しい建物がたっています。

外はガラス張りで、入り口だけ ? これは一体 ? 

ちゃんと地図に載ってます。

よく見ると、彼の名前が。

地下一階に降りると、地下なのに水の光が明るく、水族館にいるようです。

「海の中にいるみたいで、不思議でしょ」

まだ下に階段があります。

リッキーはここがなんの場所かピンときました。 

レストルームも確認。ちょっと緊張してきたので、リッキーは顔を洗って鏡でチェックしています。

そして地下二階におりました。

ここは・・・

「どう ?  リッキーのお店 」

「すごい、オレのイメージにぴったりだ」

「石壁に囲まれて、たいまつの明かりだけ。洞窟みたいでなんだか落ち着くのよね」

「このたいまつはイミテーションだから安全なのよ。特注でフランスの職人さんに精巧に作ってもらったの 」

あちこちに彼女のアイデアがでています。

リッキーはうれしそうにカウンターにつきました。ついに彼もお店のオーナーです。

 名前は「 Ricky ‘ s  Arm  (リッキーの腕まくら) 」 で登記しました。

「言っとくけど、ここは共同出資でいろんな人たちが協力してくれたお店だから、軌道にのったらちゃんと返済していくのよ。それまで名義は連名だからね」

きっと出資は、マシューはもちろん、セレブのローラやお金持ちの名前がずらり、警察関係のロミオや、バーテンダー協会の名前や、いままで関わったみんなの名前が連なってるでしょう。

落ち着きます。洞窟をイメージして、カウンター以外何も置いていないバーです。

いつか二人で過ごした墓地の静かなバーが、お手本になっています。

これからはそれぞれのお店で、自分の力でやっていこう。

リッキーは独立しました。 

お店はすぐ繁盛しました。

なぜかリッキーの通知メッセージに、カクテル作りがマスターになっておめでとうのような表示がでたんだけど、これ、なんだろう。とっくにレベル10なのに。

でも、あらためて本当にカクテル作りの名人になった気分で、リッキー へのお祝いメッセージをもらったことにします。

荷物をまとめて、出て行く準備をしています。これからは別々の場所で。

ねこは、リッキーが連れて行きます。さみしくなるけど。

彼が家を出る前にどうしてもやりたいことがあって、この日は朝からあちこち走りました。

暗くなった頃、ようやく見つけました。やった、サーモンが釣れた !

ブリッジポートでサーモンを釣るなんて、全くイメージに合わないけど、釣り場をさがして、釣りスキル 0 から必死で釣って、自分の力で釣れたんです。やったーすごいよ。 

トントントン、材料さえあれば、このメニューはつくれます。今まで作ったことないからぜひ食べさせてあげたい。

リッキーが好きなサーモン料理です。なんで今まで作らなかったんだろう。でもこのサーモンは初めてケイトリンが自力で釣った魚だから、愛がこもっています。

「すげぇ、オレの大好物 ! 」 

パチパチ拍手してくれたとき、すーごくうれしかったです。

今まで、ありがとう。

つづきます >>  第21話 彼とねこが出て行きます

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