
なんだかいいムードになってきました。しかもいいかんじに夕日が落ちてきます。
ミックが思わず迫った無骨な行動が、 ケイトリンには逆に新鮮だったようです。
普段は話上手で落ち着いて、なんでも対処できそうな彼なのに、彼女の前では不器用になるところが、よかったのかもしれません。

ケイトリンのふきだしにポッとこのマークがでました。
「もう恋人になっちゃう ? 」
からかうように、ストレートに聞いてきます。いま彼女の方が誘惑的。どんどん盛り上がっています。
ミックの目がもうウルウルして、かわいい・・・よし、このまま行こう !

このまま、ミックは突き進みます。がんばれミック。この時点ではまだベストフレンドの関係だけど、

このあとチュッとして・・・
わお、タワーの夜景が素敵。一応ねらってこの場所を選んだけど、ロケーションばっちりです。
こんなロマンチックな場所なら、たいていの女性は OK しちゃうでしょう。だから、

このままサプライズ、いきます。
「えっ、なに ? 」
ケイトリンはかなり驚いたと思うな。さっきまで友達だったのに。

「ええっ、いつのまに用意してたの ?」
「一年も前からずっと持ってたんだよ。受け取ってくれる ?」

このムード、この景色、これで NO は言えません。
あまりにサプライズすぎて、彼女は魔法にかかったようにスッと手を出したと思う。

きっと二人三脚で、うまくやっていけそう。

ミックは科学者だけど、天文学も詳しくて、空を指差してあれこれ知識を披露しているんじゃないかな。彼のイメージが湧いてきます。
「星はエトワールっていうんだよ」
ケイトリンは夜空をみながら、きっとカクテルの新しい名前を考えているでしょう。

宿舎に戻りました。暖炉の部屋が居心地よくて、ホッとしました。
さっきまで友達だったのに、いきなりフィアンセの関係になるなんて大躍進です。

二人とも、夢を見ているようです。

ネクターも作れるようになったし、帰ったらやることがいっぱいです。

ブリッジポートに戻ったら・・・
現実が待っています。どうなるんだろう。

「リッキーのことは大丈夫かい」
「たぶん、大丈夫と思う。ちゃんと話し合うわ」

次の課題はリッキーとの今後です。なんて言おうか。
少し不安を抱えながら帰国します。

ブリッジポートに帰りました。景色が変わると、本当に旅行から戻った ! って実感がわいて、時差ぼけ気分になりました。

家に着きました。 リッキーはちょうど仕事にでかけたところです。
「リッキーが納得するまで話し合うんだよ。俺はしばらく連絡しないから、当分は今まで通り生活してていいからね 」

そういって、ミックも仕事に出かけました。
(ミックはここでいったん世帯を切り離して家に帰します。世帯は元に戻り、またリッキーとケイトリンの二をコントロールしていきます)

リッキーが欲しがっていたリキュールとネクターを抱えて、彼のお店に持ってきました。
彼女がちょっと興奮気味に、旅行の話をペラペラしゃべっています。ワイナリーのことや、景色がよかったこと、お土産話をいろいろ。
リッキーは、だまって話を聞いていましたが、

すぐに見つけてしまいました。
ケイトリンが話に夢中で振り回す左手に、旅行前にはつけていなかった新しい腕時計と、リングがキラリ。
このリッキーの顔、たまりません。なんとも言えない表情です。
今回の旅行で何が起こったのか、すべてを悟ったように見えました。

「あっ… 気がついちゃったかな」
ケイトリンも、ハッとしました。

タワーのデザインがついた、フランス製の時計。ミックが旅行中にお店で買ってくれたプレゼントです。

しばらく沈黙が続きます。

もう、引き返せないよね、って顔をしています。
どう話せばいい ?

「話があるんだけど・・・」
と、ケイトリンは切り出したけど、

「わかったから、言うな」
と、低い声で一言だけ。

また沈黙が続きます。
二人でしばらく飲みました。

「このネクター、若いけど、味はまあまあだな」
「でしょ、もっと熟成すれば、いい味に変わっていくわ」

うつむいて、また黙っています。なんて切ない顔をするんだろう。
(これ偶然です。この顔、たまりません、もう胸キュンがとまらずキュン死にしそうでした)

「オレが師匠なのは変わらないんだから、これからもオレのこと尊敬しろよ」
と、最後は笑っていつも通りに戻ったことにします。
これらのシーン、ポーズでもなんでもなく、本当にリッキーの自然の動きからうまれた表情です。
これでもかというくらい、いい顔をしてくれて、切なく感動しました。
つづきます >> 第20話 ついに独立、リッキーの腕まくら ( Ricky’s Arm )